2015.9.1
ドイツ−ベルリン−碇家
「そろそろ着くころかしらねぇ? あなた」
「ん?ユイ、なんのことだ?」
「何を言ってるんですか、彼女のことですよ」
「......(汗)」
「まさか忘れてたんじゃないでしょうね? あ・な・た?」
「さて、そろそろ出かけないと...」
「ちゃんと二人には伝えてあるんでしょうね?(にっこり)」
「...いや...まだだ...(恐)」
「あ・な・た(怒)」
「...ふっ...問題ない(汗)」
「大ありですっ!!(怒)」
2015.9.2 − 07:50
日本−第3新東京市−碇家玄関
「「いってきまーす!」」
朝のマンションに僕たち兄妹の声が響く。
別に聞く相手などいないけど、それでも出がけの挨拶は習慣となっている。
4ヶ月程前まではちゃんと聞いてくれる相手がいてくれた。
現在、その両親は長期海外出張中、そのためこの家には僕と妹の二人しか住んでいない。
僕が高校に入学したばかり、妹は来年高校受験であるため、二人で日本に残ったのだ。
オートロックがかかったのを確かめ、僕と妹は通路を歩いて行き、エレベーターに乗る。
「あーあ、今日からまた退屈な毎日のはじまりかぁ〜、昨日は始業式だから半日だったけど」
僕の妹、レイがいかにも嫌そうに言う。
そりゃそうだ、僕だって学校なんて好きじゃない。
ちなみに、僕とレイは同じ学園の高等部と中等部に在籍している。
校舎は違うとはいえ、同じ敷地内にあるため、なにかと便利だ。
「そんなこと言ったってしかたないだろ? レイ」
「はいはい、お兄ちゃんは優等生ですから」
「レ〜イ〜」
「あ、そういえばね、今日私たちのクラスに転入生が来るらしいの。どんな人かなぁ〜?」
「ん? レイはかっこいい男の子がいいんでしょ?」
そう言って僕は微笑んだ。
レイのほっぺたが可愛らしく膨らむ。
「お兄ちゃんのバカ」
レイが何か小声で言ったが、聞き取れなかった。
ちょうどエレベーターが1階へ着き『チンッ』という音とともに開いたからだ。
まぁ、大体予想はつくんだけど...
「じゃあね、レイ」
「うん、お兄ちゃんも気をつけてね。事故しちゃだめよ〜」
右手に持ったヘルメットを挙げて応える。
16才になると同時にバイクの免許を取った僕は、それまでの自転車通学をバイクに変えた。
レイにしてみれば、それは一人で置いて行かれることになるために不満らしい。
だけど、いいかげんに兄離れしてもらわないとこっちが困る。
そう、レイはいわゆるブラコンなのだ。
「おはようさん、センセ」
「おはよう、シンジ」
僕の友人たち、年がら年中ジャージを着ている男−鈴原トウジと癖っ毛で眼鏡をかけている男−相田ケンスケがげた箱で靴を履き変えようとしている僕を見つけて声をかけてくる。
「おはよう、トウジ、ケンスケ」
この二人は中等部の頃からの付き合い。
お世辞にも人付き合いがうまいとは言えない僕の数少ない親友と呼べる存在だ。
3人揃って行動することが多いため『3バカトリオ』なるありがたい称号をいただいている。
だけど嫌な気分じゃない、傍から見ても僕たちは本当に仲がいいらしい。
僕たちは揃って教室へと向かった。
「なぁ、シンジ。今日、中等部の2−Aに転入生が来るらしいぜ」
「うん、そうらしいね。出がけにレイから聞いたよ。でも、それがどうしたの? ケンスケ」
ケンスケはその眼鏡を怪しく光らせ...そう、まるで『キラーン』という擬音がふさわしいほどに光らせて僕に言う。
「わかっちゃいないねぇ、シンジは。このオレの情報収集能力を甘く見るなよ」
そうだった...ケンスケは学園内部に張り巡らせた怪しげなネットワークを持っているんだった。
そうすると、導き出される答えは自ずから一つ。
「そうか...転入生って女の子なんだね? ケンスケ」
「その通り、しかもかなりの美少女らしい!」
「それで2−Aということは...」
「お察しの通りだよ、レイちゃんに説得をお願いしたい」
「はぁ...」
僕はため息をつくしかなかった。
ケンスケは学園内部の美男美女の写真を撮影し、それを売りさばくことによって収入を得ている。
ただ、ポリシーに反するとかで、本人に承諾を得ることなく撮影することはないらしい。
そして、それによって得た収入は全て撮影器材に廻っているので、撮影技術と器材はどんどん一流カメラマン並みになっている。
「ほな、ワイの出番も増えるってことやな? ケンスケ」
トウジは不良債権の取り立て屋だ。
「わかった、言ってみるよ」
「頼むぜ、シンジ」
「おっはよー!」
「あ、おはよう、レイ!」
教室に入って挨拶をすると、私の大親友−洞木ヒカリが挨拶を返してきた。
この子とは小学校からの付き合い。そして現在は碇家の主婦たる私の良きアドバイザー兼師匠。
お兄ちゃんも料理は出来るけど、今では大方の料理では私の方が上。
それはひとえにお母さんとヒカリのおかげ。
「ねぇねぇ、レイ。今日転入してくる人ってどんな人かなぁ?」
「うーんそうねぇ」
小首を傾げ、頬に手を当てて考え込むふりをする。
私にとっては大したことではないのだ。
「まぁ、どっちにしてもレイは興味ないもんね? シンジさんの上をいく人なんてそうそういないし」
こいつ...わかっててこんな質問したわね?
ヒカリの顔を見た途端、そんな考えが浮かんだ。
そうなのだ、学園内で私のブラコンは有名。
だけどしょうがないじゃない、それだけうちのお兄ちゃんはかっこいいもん。
お母さんに似て繊細な中性的な顔だち、お父さんゆずりの高校1年生にしては高い身長。
成績も悪いわけじゃないし、運動神経も良い、性格も穏やかでとても優しい。
ただ、ちょっと鈍いという致命的な欠点がある。
「はいはい、そういうことにしときましょ」
「あら? 怒っちゃった? レイ」
「べっつにぃー、それよっかHR始まるよ。いいんちょ」
「あ、ほんとだ。席につかなきゃ、じゃね、レイ」
そう言ってヒカリは自分の席へ戻って行った。
おのれぇ〜今度鈴原さんのことで復讐してやる。
【ガラッ...ガシャン!!】
ほどなくして入り口の扉が大きな音を立てて開いた。
たのむから硝子割らないでね、先生...
続いて姿を現したのはこの学園一の美女との呼び声も高い私たちの担任−葛城ミサト先生。
紫がかった長い黒髪をなびかせ、Eカップとも言われる巨乳を揺らしながら教壇へと上る。
そして開口一番。
「あったらしい仲間を紹介するっ!!」
良きにつけ悪しきにつけ、こういうノリが大好きな人なのだ。
「よろこべ男子っ!! 美少女だっ!!!」
【うおおおおおおおおおおおおおおっっっっっっ!!!!!!】
バカばっか...
ほら、女子はしらけまくってる...
「じゃ、入ってきて!」
その声に続いて入ってきた女の子は、女の私から見てもとびっきりの美少女。
顔はもちろん、すらりとした手足、折れそうな程の細いウエスト、私たち14才平均より発達した胸。
黒板にさらさらと筆記体で自分の名前を書いていく。
振り返る時にその紅茶色、とでも言えばいいのだろうか、長い髪がふわりと舞う。
そして澄んだその蒼い瞳、その瞳がふっと笑った瞬間に聞こえてくるその容貌にふさわしい可愛い声。
「惣流・アスカ・ラングレーです。ドイツから来ました、よろしくお願いします」
その笑顔にクラスの男子は完全にノックアウトされてしまった。
でも、彼女は別に気にもしてない様子。
ひょっとして慣れてるのかしら? なんかちょっと違う様な気がするけど。
あれ? その前に...
「惣流さんは日独クォーターなので、日本語が話せます。みんな仲良くすること!」
...納得。
「はい、じゃあ、惣流さんはレイの隣に座って。レイ!」
「あ、はい!」
突然呼ばれて驚いちゃった。
そういえば、私の隣の席空いてたんだっけ。
「あの子の隣ですか? 先生」
「そう、碇レイちゃん。あの子も可愛いでしょ?」
「そうですね、葛城先生」
「ミサトでいいわ。みんなそう呼んでるから」
「わかりました、ミサト先生」
「よし。さぁ行った行った!」
そして彼女は私の隣に座った。
座り際に一言。
「これからよろしくね、レイ」
太陽の様な笑顔だった。
でもどっかで見たことある様な...?
いきなり画面にメール着信を知らせるポップアップウィンドウが広がる。
誰だ? 授業中だっていうのに。ん? なんだ、レイか。
また夕飯の献立のリクエストでも聞いてきたのかな?
今は電子化が進みノートも教科書もほとんど必要ない。
大方のことは端末であるノートパソコンだけで事足りるからだ。
そして学内に張り巡らされたネットワークを通じてメールのやりとりをすることができる。
おかげで授業そっちのけで遊ぶやつらが出てくるんだけど。
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From:Rei Ikari To:Shinji Ikari Date: Wed, 02 Sep 2015 09:04:17 JST Subject: 大ニュース ------------------------------------------------------ お兄ちゃん大ニュース! 今日来た転入生、すっごい美少女よ! 相田さんの写真の売り上げが伸びること必至! ------------------------------------------------------ |
レ〜イ〜...あのバカ妹...しょうがない。
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From:Shinji Ikari To:Rei Ikari Date: Wed, 02 Sep 2015 09:06:26 JST Subject: Re:大ニュース ------------------------------------------------------ あのねぇ、レイ。 そんなことでいちいちメール出してくるんじゃないの。 お兄ちゃんがそういうことに興味ないの知ってるでしょ? あ、そうそう、ケンスケが撮影の許可取ってくれって言ってたよ。 じゃ、頼むね。 ------------------------------------------------------ |
ん?また来た。
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From:Rei Ikari To:Shinji Ikari Date: Wed, 02 Sep 2015 09:08:32 JST Subject: バカバカバカバカ ------------------------------------------------------ むぅ、お兄ちゃんのバカ。 相田さんの件は言っとくわ。 あと、学校終わったら買い物つきあってね、校門のとこにいるから。 ------------------------------------------------------ |
はいはい、わかりましたよ。僕はどうせ荷物持ちです。
ため息を一つついてから、僕は授業に集中することにした。
後悔という名の後書き、もしくは後あがき。(爆)
家主様がもっと調子こけと言ってくださるので、お言葉に甘えさせてもらってますが、
いいのか?こんなん書いて?(^^;
レベルが低いものを読みたくない方はすぐさま退避することをおすすめします。
〜 サブタイトルは中西保志の同名の曲 ”幸せの前ぶれ”より 〜
1998.9.12 おかやん