to tell the truth After Story
#2 どこに行ったんだろう? あのバカは





「あ、アスカ。 今日はレイと買い物に行かなくちゃいけないから、先に帰っててくれる?」

「むぅ〜」


授業も終わり、カバンに荷物を積め込んでいたアスカにかけられたシンジの言葉。
彼女はぴょこん、とびっくりした様に顔を上げてむくれてしまった。
レイがシンジのことをあきらめたとはいえ、アスカにとって完全に安心できない状況であることに変わりはない。
シンジもここでアスカもいっしょに来るか? と聞けばいいのに、どうしてこういうことには気が利かないのだろう。

机にほお杖をつき、残った左手の指先でコンコンと机を叩きながら、アスカは憮然とした表情でシンジを見る。
その目は『ほら、アタシもいっしょにって言いなさいよ!』と言っているのだが、生憎とこういう時にはシンジとのアイコンタクトはまともに働くことがない。


「じゃ、後でね。 行くよ、レイ」

「うん..お兄ちゃん。 ごめんね、アスカ」


案の定、シンジは軽くアスカに声をかけると、レイに向き直った。
そしてレイはすまなさそうにアスカに軽く頭を下げる。


「はぁっ..しょうがないわね。 シンジを頼むわよ、レイ」


レイに対しては多少なりとも負い目を感じているアスカが、やれやれと言った感じでレイにシンジのことをまかせた。
これがなんのことを指すのか、はっきり言えばシンジに悪い虫が寄ってくるのを防いでくれと言っているのだ。
レイも元よりそのつもり、自分が認めたシンジの伴侶はアスカしかいない。


「..うん。 それじゃ、また後で..あ、ケーキ買ってくるね」


レイがにこりと微笑む。
やはり血は争えない、どこかシンジの面影が重なるその笑顔。
その笑顔を見たアスカは一瞬赤くなったが、あわてて言葉を探す。


「そそそそうね、チーズケーキにしてくれる? レイ」

「わかったわ、レア? ベークド?」

「うーんと、レアにしてくれる?」

「レアね? お兄ちゃんも好きだし、ちょうどいいわ」


くすっとレイは笑い、教室の入り口で待っているシンジの所へ軽快に駈けて行った。

《お兄ちゃん...か。
 まいったわねぇ...あんな無邪気な笑顔されたら、何も言えないじゃない。》

こめかみに手をあてて苦笑しているアスカにヒカリが声をかけてくる。


「あら? ふられちゃったみたいねぇ? アスカ」

「ヒ〜カ〜リ〜...冗談でもそんなこと言ってるとコロスわよ?」

「...(汗)」


正真正銘の殺気に当てられたヒカリは二の句が継げなくなった。
正規の戦闘訓練を受けたアスカだけに、本気になった場合はどの様な惨劇が繰り広げられるか判ったものではない。
ひきつった笑顔を浮かべたままの彼女の背筋をつぅっと冷や汗が伝う。


「うぉ〜い、ヒカリぃ。 ワイ今日はケンスケと行く所があるよって、一人で帰ってくれへんかぁ〜」


お気楽なトウジの言葉。
この殺伐とした空間を壊すのにこの男の言葉ほど都合のいいものはないだろう。
しめたとばかりにヒカリは振り返ると、トウジに向かって返事をした。


「あ、鈴原。 わかったわ」

「ほな、明日なぁ」


と言ってトウジは脱兎のごとく駈けて行った。
呆然としていたヒカリだが、我に返るとあることに気づく。


「鈴原ぁ!! あんた今日掃除当番でしょうがぁ!!」


正義の味方モードに入ったヒカリだが、時既に遅し。
トウジとケンスケの2バカは4速全開で階段への最終コーナーを曲がって行った所だった。


「ったくもう!! アホトウジっ!!」

「相変わらずねぇ、あの熱血バカも」


憤然としているヒカリと、くすくすと笑っているアスカ。
ヒカリは大きなため息をつくと、アスカに向き直った。


「しょうがないわよ、あれは一生なおらないわ。 さて、置いてけぼりどうしで甘味屋でも行かない?」

「いいわね。 いつから鈴原がヒカリのこと名前で呼ぶ様になったか聞かせてもらわなきゃならないし? そういえば、最後のセリフだけヒカリも名前で呼んでたわね? "アホ"付きだったけど」


アスカがにやりと笑う。
ヒカリはトウジと自らの失言に心の中で舌打ちしながらも、どこかうれしそうにしていた。
さて、のろけ合戦はどちらに軍配が上がるのだろうか。















「..ねぇ、アスカも誘ってあげればよかったのに」

「あ、そういえばそうだね..全然気づかなかった。 ははは...」


今さらながらのレイの言葉に、シンジは乾いた笑いを響かせた。
そして今日も折檻が待ってるのかな? と考えつつも、なんとかして回避策を見つけるべく脳味噌をフル回転させる。

《碇くんも苦労性よね、キスしてあげればアスカはすぐにおとなしくなるのに。》

難しい顔をしたシンジを見て、レイはくすくすと笑いながらそう思った。
言葉ではお兄ちゃんと読んでいるが、思考内部では碇くんのままらしい。
それでも気を取り直すと、シンジの前に立ちこう言った。


「でも、今は私のことだけ考えてね? お・に・い・ち・ゃ・ん」

「ん? わかったよ、レイ」


彼女の前半の言葉はその想いの現われ。
例え妹としてであっても二人でいるときは自分だけを見て欲しいという気持ち。
そして最後の言葉の意味ぐらいはシンジだってわかる。
浮気をしている様に思わない様にとのレイの心づかい。


「さて、最初はどの店にする?」

「そうね..」


唇に人さし指をあて、小首を傾げて悩む妹の姿を、微笑みながらシンジは見つめた。















「なんとかうまくまいたようやな?」

「そうみたいだな」


ヒカリからうまいこと逃げおおせた2バカが歩いている。
トウジは相変わらずカバンを肩にかついだまま。
ケンスケはデジタルカメラを片手に、周囲を軽く見回しながらシャッターチャンスを狙っている。


「で、今日はどこに行くんや?」

「うーん...最新のゲームが入ってくるのは来週だしなぁ」

「さよか、なら...」


と、そこへ涼やかな声がかかる。


「ケンちゃん!」


ギクッとばかりにケンスケが肩をすくめ、恐る恐る振り返る。
その視線の先には。


「なんの用? マユミちゃん」

「別に用という用はないんですけどね、たまたま見かけたものですから」


そう言って彼女はにこりと笑う。


「ところで、お二人揃ってどこへ行くんです?」

「いや、ゲーセンでも行こうかと思ってたんだけど..それより、ケンちゃんはやめてくれないかなぁ?」


女の子に名前で呼ばれることには慣れていないケンスケが、照れ臭そうにマユミに懇願する。
だが、マユミは相変わらずにこにこと人のいい笑顔を浮かべたままやり返した。


「いいじゃないですか、この方が呼びやすいんですから」

「ええやないか、ケンスケ」


と、トウジが澄ました顔をしながらケンスケのわき腹をつつき、マユミの掩護射撃をする。
その光景を微笑んで見ていたマユミだが、あることを思いついた。


「あ、もしよろしければ、この前言っていたカメラを選ぶのにつきあっていただけるとうれしいんですが..」


彼女らしくない、どこか尻すぼみの言葉。
3バカトリオの中では一番女心を酌み取ることに長けているケンスケのこと、その言葉の響きが意味することぐらいは判る。
だが、それを言葉にすることははばかられた。


「え? 今から?」

「..はい、もしよろしければ..ですけど」


是非もない。
ケンスケはトウジに振り返ると、目で聞く。

《お前たちがそそのかしたんだから、いいよな?》

トウジがにやにやと笑いながらうなずいた。


「いいよ、じゃあ行こうか、マユミちゃん」

「え? 本当にいいんですか?」


驚いた彼女に、ケンスケは照れ臭そうな笑顔で応える。


「ほな、ワイはここでお別れやな? さぁてナツミにタコ焼きでも買うて帰るかぁ、んじゃな」


彼とて親友が幸せになるのはやぶさかではない、ここは早いとこ立ち去るのが無難と考えた。
トウジはカバンを軽く振ると、そのまますたすたと立ち去って行く。
残された二人は、しばらくトウジの背中を見ていたが、やがて顔を見合わせたあと、アーケードの中へと歩みを進める。















「んで?」


あんみつを口にしながら、アスカがヒカリに聞いている。
その言葉に込められている意味は、当然ながらいつから二人が名前で呼びあう様になったかということ。


「ん?」


と、ヒカリははぐらかす。
親友に聞いて欲しいという欲求はあるものの、恥ずかしがり屋の彼女のこと、そう簡単に口は割れない。
アスカもそれは想定していたらしく、片眉をぴくっと上げると、人の悪い笑みを浮かべる。


「あら? とぼける気ぃ〜?」

「なんのことかしら?」

「トウジのことよ、ト・ウ・ジの」


と、アスカはわざとらしく鈴原ではなくトウジと名前で呼んだ。
一瞬、こんちくしょうといった顔でアスカを見たヒカリだが、すぐに逆襲の手だてを思いついた様だ。
にっと笑って口を開く。


「私はね、シンジくんとアスカみたいにいつでも名前で呼びあっていちゃいちゃなんかしてないわ」

《そうきたか...なら..》

「 じゃあ、たまには名前で呼びあっていちゃいちゃしてるってことよね?」


にやにやと笑いながらのアスカの再逆襲。
しょせん、口喧嘩でヒカリがアスカに勝てるわけがない。
ヒカリは赤くなり、うつむいてしまった。
そんな彼女を見て、アスカは優しく言葉をかける。


「いいじゃない? お互い好きなんだし、別に気にすることじゃないでしょ?」


恋人どうしになったのはヒカリとトウジの方が早かった。
あの夜、寄り添う二人を見てアスカは自分もシンジとそうなりたいと痛切に思った。
そして、正直に自分を..自分の想いをシンジにぶつけていった結果、今のシンジとの関係がある。
その二人が進展することは彼女にとっても喜ばしいこと。


「..うん」

「それでいいのよ、んで?」


またアスカはいぢわるモードに入った様だ。
おっさんミサトに弟子入りするのも近いかもしれない。


「うん..この前、鈴..トウジの家に行った時にね、ナツミちゃんがトウジに言ったの。 『兄ちゃん、ヒカリお姉ちゃんのこと、どうして名前で呼んであげへんの? いつまでもいいんちょなんてかわいそうやんか、恋人同士なんやしこないようしてもらってんやから、それくらいしてあげたかてバチは当たらへんのとちゃう?』って」


顔を上げたヒカリは一気にこう言った。
言ってしまうと、少しは気が楽になった様だ、どこか晴れ晴れとした表情になる。
そんな親友を見て、アスカもうれしくなった。


「へぇ〜あの熱血バカと違って、妹は気が利くじゃない。 で、ヒカリも名前で呼ぶ様にしたわけ?」

「うん、ナツミちゃんからそうしろって言われてね」

《う〜ん...ここは小姑との確執はなさそうね。》


と思ったアスカだが、ヒカリの次の言葉は彼女を呆れさせた。


「だけど、今まで以上に食事作りに来てくれってあとでこっそり言われたわ」


呆れ返ったアスカを尻目に、トウジの家に行く大義名分ができて、ヒカリはうれしそうにしていた。
今日ののろけ合戦はヒカリに軍配が上がった様だ。















夕食の時間。
葛城家のダイニングでは、餓えた2羽の鳥がぴーぴーとテーブルで鳴いている。
片方は雛と呼ぶには薹の立った女性。
もう片方は雛から成鳥へとまさに羽ばたこうとしている女性。
彼女たちが待ち望んでいるのはただ一つ、この家の料理長と助手が作ってくれる温かい食事。


「さぁ、できましたよ」


そう言って、レイが運んできたのは秋らしく、キノコのマリネ。
続いて、シンジが振り返る。
その手に抱えられているのは鶏肉と玉ねぎのトマト煮。
テーブルの中央に置くと、またキッチンシンクへと二人で戻って行った。


「まだなにかあるのかしらねぇ? ミサト」

「どうでもいいから、あたしゃ早く飲みたいわぁ〜」


と、相変わらずのんべのミサトをアスカはジト目でにらみつける。
そうこうしているうちにシンジとレイが戻ってきた。
レイは取り分け用の小皿と、自分用のキノコ入りオムレツが乗ったトレイを、シンジはパスタが入った大皿を抱えている。
そして、テーブルの上に並べ終わると、自分の席に着いた。


「「さ、どうぞ」」

「「いただきまーす!」」


みごとにユニゾンした兄妹の言葉に、これまた奇麗なユニゾンで返す二人。
そして、景気のいいプシッという音と共に、ささやかながら、にぎやかな夕食がはじまる。


「紅茶でいいよね?」

「うん」


という食後の会話。
今までならシンジとアスカの会話だが、レイが来てからお茶やコーヒーを淹れるのは彼女の仕事になっている。
アスカにとって、シンジが淹れてくれる紅茶を飲む回数は減ったが、逆にシンジのそばにいることができる時間は増えた。
例えそれがほんの数分だとしても。
レイがケトルに水を入れはじめるのを見届け、二人はリビングへと移動する。
シンジはすたすたと、アスカは手を腰の後ろに回し、ちょこちょこと弾む様に彼の後ろをついていく。

夕食の時間だけでは語り尽くせなかったらしく、お湯が沸くまでのしばらくの間、4人は今日のできごとを話した。
アスカはヒカリとトウジがついに名前で呼びあう様になったことを、どこかいやらしい笑みを浮かべてうれしそうに。
シンジとレイは買い物の時に起こったことをこれまた楽しそうに。
ミサトはそれらに相槌を打ちながら、優しく微笑んでいる。
そして笛吹きケトルが自分の存在を忘れるなとばかりに、かん高い音を立てて自己を主張した。
レイはあわててキッチンへと走って行く。


「レイも明るくなったわね?」

「そうですね、ミサトさん」

「やっぱり、シンちゃんのせいかしら?」


というミサトの言葉にシンジは苦笑する。
もともと自分は大した人間ではないという思いがある上に、レイが少女らしくなったのは別の要因があることに気づいているからだ。


「違います、アスカのおかげですよ」

「アタシ?」


自分をじっと見つめるシンジにきょとんとした顔をしながら、自分を指差してアスカは聞き返す。
シンジは軽くうなずくと。


「そう、良くも悪くも自分自身に正直で、感情をストレートに表へ出すアスカがそばにいたからこそ、レイは年相応の女の子らしい感情表現を覚えることができたと思うんだ」


そんなシンジの言葉にミサトは感心した様に彼を見つめた。


「そうね、アスカを見ていればどんな時にどんなふうにすればいいかは一目瞭然だものね」


その目は立派に成長した弟を見る姉の目。
そして誇らしげな光を湛えている。
アスカも、そんなシンジを頼もしく見ていたが、あることに気づいて眉根を寄せる。


「シンジぃ...それじゃアタシが感情の赴くままに行動している派茶目茶な女みたいじゃないのよっ!!」


アスカは一気にシンジを押し倒すと、スコーピオンデスロックをかける。
ぎりぎりと締め上げられ、苦しい息の下でシンジは必死にアスカに懇願する。


「ぐえぇ〜っ! ギブ! ギブアップぅ〜!!」

「うるっさぁ〜い!!」

「うぎゃあ〜!!」


最後にもう一度瞬間的に締め上げると、アスカはシンジの足を離した。
バタンと大きな音を立ててシンジの足が床に叩きつけられる。
アスカはふふんと笑うと、荒い息を吐いているシンジの背中にボディプレスを敢行した。


「ぶほっ!」


自分の腰からアスカの重みが消え、安堵した状態のシンジ、いきなりの攻撃に心も身体も準備ができていない。
パニくった思考の彼の首へ、蔦が絡みつく様に白い腕が巻きついてくる。


《キャメルクラッチ!?》


散々下半身側から腰を攻められたあげく、今度は上半身側からも攻められるのはかなわない。
今までさせるがままにさせていたシンジだが、反撃すべく身体に力を込めた。
今のシンジが本気になれば、アスカから逃げることなどたやすいこと。


《ん?》


だが、シンジの予想とは裏腹に、アスカはぴったりとシンジにしがみついたまま離れない。
シンジの首筋に顔を埋め、そのままじっとしている。
その意図する所は −


《こ、この感触はひょっとして...》

《どう? 成長したでしょ?》


− 飴と鞭。
どうやら、自分の主力兵装の大きさをシンジに実感させることにあったらしい。
そんな二人を、ミサトはにやにやと笑いながら、いつのまにかケーキと紅茶を抱えて入ってきたレイは困った顔をしながら見つめていた。















「さみしいよぉ 〜シンジぃ〜」


ベッドに身体を投げ出すなり、アスカが枕に顔を埋めたままそうつぶやく。
レイが葛城家の隣に越してきた際、女の子の一人住まいはぶっそうだからとゲンドウから言われ、シンジはレイといっしょに住むことになった。
だったら自分がいっしょに住むからレイはミサトと住めだのなんだのと、アスカは難癖をつけまくったのだが、結局はシンジに優しく諭され、おやすみとおはようのキスをきちんとするという条件の元に合意した。
だから、レイとシンジは揃って葛城家へ現われ、そして食事をともにして潮時になると自分たちの部屋へと戻るというのが最近のパターンになっている。
当然、カードキーは全員がお互いの家のものを持っており、自由に出入りすることができる。

そして今日は土曜日、いつもの様にいっしょにすごそうと思っていたのだが、朝食を作りに葛城家に現われたのはレイだけだった。


「あれ? シンジは?」

「お兄ちゃんなら、緊急呼び出しだとか言って、ネルフに行ったわ。 聞いてないの? アスカ?」

「緊急呼び出し? 聞いてないわねぇ? ミサトもまだ寝てるし」

「珍しいこともあるわね、お兄ちゃんがアスカに何も言わないなんて?」


二人とも怪訝な顔をして見つめあう。
確かにシンジがアスカに何も言わないで出て行くことなどめったにない。
やきもち焼きの彼女に猜疑心を植えつけないためには、そうすることが絶対条件だからだ。


「でも、ネルフだって言うんだから、心配することもないんじゃないかしら?」

「そうね、後で電話してみましょ」


とは言うものの朝食を終え、自室に戻るなりアスカは一人つぶやく仕儀となった。


【Trrrr...Trrrr...チャッ】

『あ、アタシだけど、シンジにつないでくれる?』


ネルフ内でアスカを知らない者などいない、まして発令室ならなおさらだ。
苦笑したオペレーターは端末を操作して、シンジが現在いる場所を検索する。
だが、現在のシンジの行動はプロテクトがかかっていて割り出すことができない。
このモードだと解除するためにはゲンドウの解除コードが必要となる。
オペレーターはアスカの怒鳴り声を想像しながら顔をしかめた。


「今、シンジくんの行動はプロテクトがかかっていて検索ができないんですよ」

『なんですってぇ!? なんでそんなことやってんのよ!!』

「いや、私に言われても困るんですが...」

『あ〜もう! あんたじゃ話にならないわ! 司令につないでちょうだい!』

「司令は現在出張中です」


という不毛なやりとりが続いていたが、それを白く細い指が断ち切る。


【カチッ】

「ちょっと、レイ!? なにすんのよ!」

「だって、お兄ちゃんはネルフにいることは確認できたわけでしょう? だったら浮気はしていないはずよ?」


憤然としたアスカさえも一気に冷めさせる様なレイの静かな言葉。


「それもそうか...レイ、あんたってほんとに冷静ね?」

「お兄ちゃんのことになると、アスカが熱くなりすぎるだけよ」

「......」


図星である。

「なんですってぇ!?」

『ごめん、そういうことだからさ。 ほんっとーにごめん』

「ちょっと待ちなさい! シンジっ! ってシン...切っちゃった..あんっのバカぁ!!」

「どうしたの?」

「あーもう、なんでこうなるのよっ!」

「だからどうしたの?」

「どうもこうもないわよっ! バカシンジは泊まり込みだって!」

「じゃあ、今日の夕食は3人前ね」

「レイぃ〜(泣)」















そしてまたたく間に1週間が過ぎた。
早朝、デイパックを背負ったシンジが家を出ようとしている。


「じゃ、行ってくるよ」

「ほんとに何も言わない気なの? お兄ちゃん?」


レイの問いかけにシンジは少しさみしそうに笑って言葉を返す。


「うん..言っても心配かけるだけだろうしさ。 それに、今日で終わりだから大丈夫だよ、レイ」

「お兄ちゃんがそう言うなら何も言わないわ..後のことはまかせておいてね」


レイは静かに微笑む。
そのレイの顔を見たシンジは母さんも同じ様に微笑んでくれたかな、と思う。
そして微笑み返すとドアを開けて出て行った。


「ふぅ...」


エレベーターの中でシンジはため息をつく。
そして服の上からそっとペンダントを握り締めた。
後ろめたいことをしているわけではないが、これで3週間もアスカと週末をすごしてあげられなかったことに関しては言い訳のしようがない。


「だけど、今日で終わりだ」


そうつぶやくと同時にエレベーターの扉が開き、シンジは歩き出す。


「ちょっと、可愛い彼女をほっといてどこに行くつもり?」


怒気と殺気をはらんだ声が彼の背後からかかった。


《まずい...》


背筋を伝わる汗を感じながらゆっくりとシンジが振り向くと、エレベーターの脇に寄りかかったアスカがいた。


「い、いや...ちょっと...」

「ちょっと? なによ?」


片眉を上げながらアスカは聞き返す、そして身体を弾く様にして壁から離れると、シンジの方にゆっくりと歩み寄る。


「だから...」

「だから? なに?」


胸の前で組んでいたアスカの腕がすっと解かれた。
このままでは完全にヒステリーを起こすことは目に見えている。


《しょうがないか...》


シンジは一足一刀の間合いを無造作に越えると、有無を言わせずアスカの唇を奪う。


《まさか、戦闘訓練での間合いの詰め方が役に立つなんて..》

「ん! んーんーんー」


それでもアスカはシンジから離れようとしてもがく。
3週間の間、たまりにたまった甘えたい欲求の裏返しの怒りはこんなことでは収まらないらしい。


《ふぅ..ごめん!》


心の中でアスカに謝るとシンジの作法が変わった。


「☆!?」


大人のキス。
決して今までしたことがないわけではないが、特別な時にしかシンジはしてくれないキス。
濡れた音が静かに漏れるたびに、アスカの身体から力が抜けて行く。
シンジが唇を離すと、いったんアスカはうつむいたが、すぐに潤んだ瞳をして顔を上げる。


「シンジぃ..もっとぉ...」

「ちょ、ちょっとアスカ何考えてんのよ!?」


彼女が抱きついたのは、徹夜で仕事を終え帰宅したミサトであった。


「...へ? シンジは?」

「シンちゃんなら走ってどこかに行ったわよ? あたしでいいなら続きやる?」


どうやらミサトは一部始終を影から見ていたらしい。


ばばばばばばバカシンジぃ〜!!!


早朝のマンションに怒鳴り声が響いた。















「いいのかい? シンジくん?」


ここはネルフ内のテストコース。
パドックに立つ二人のうちの一人、加持がシンジに聞いている。


「しょうがないですよ、加持さん。 アスカに言ったら絶対に心配してやらせてくれませんから」

「まぁ、それはそうなんだが..」

「さぁ、今日で仕上げでしょう? お願いします」


シンジは微笑むと準備をはじめた。
加持も苦笑すると、同様に準備をはじめる。















「あ〜もう! バカシンジっ!!」

「どうしたの?」


家に帰るなり、自室へ入ったアスカが1時間ほどしてから出て来た。
その間、彼女の部屋からストンバタンと大きな音がしていたのは言うまでもない。
今、彼女の部屋に入ると、片方に中身が寄ってしまった枕と、ぐしゃぐしゃに乱れたベッドが見れることだろう。
レイはシンジがどこに行ったか、そして何をしているかは知っているが、彼から固く口止めされている。
だからこそ、平静を装ってコーヒーカップを置きながらアスカに問いかけた。


「どうもこうもないわよっ! まったく、先々週はアタシがヒカリの家に泊まりに行ってたからしょうがないけど。 先週と今週もシンジが何も言わずにどこか行くから! うっきー!!」


その言葉が支離滅裂なのは彼女の精神状態の現われ。
とにかくシンジにかまってもらいたいのだが、それが3週間週末ごとに裏切られ、怒りで暴走と混乱をきたしている。
そんなアスカにレイは呆れた目を向ける。


「どっかで浮気してんじゃないでしょうね!?」


このアスカの言葉にレイは敏感に反応した。


「..アスカ?」

「なによ?」


レイの視線にどこか剣呑としたものを感じながらも、アスカは憮然と聞き返す。


「碇くんのことが信じられないの?」


レイの言葉が鋭利なナイフの様にアスカの心を抉る。
それほどまでにその響きは冷徹なものだった。


「......」


彼女はなにも言い返せない。
レイの紅い瞳に強い意志が宿る。


「..私はね、あなたと碇くんならどんなことがあっても乗り越えて行ける..なにが起ころうとお互い信じあって行ける..碇くんはあなたを求めてる...そう思ったから碇くんをあきらめた。 そして妹としてそばにいる道を選んだ..」


彼女の瞳に宿る意志、それは静かな怒り。
そして言葉づかいも、かつての彼女の様に抑揚を押さえた静かなもの。
それだけにアスカにとってはどんな叱責よりもこたえた。


「...レイ..」


レイはそのまま言葉を続ける。


「..だけど、あなたが碇くんのことを信じられないと言うのなら...碇くんを疑い、悲しませるのなら....」


紅い瞳が凄絶な光を増した。


「...私は躊躇なく碇くんを奪う」


彼女の言葉と射貫く様な視線に、アスカは色を失う。
膝ががたがたと震え出すのを止めることができない。
しばらく沈黙が続く、アスカは力なく崩れ落ちうつむいたまま小刻みに震えている。
その心の中ではやっと手に入れることができた自分を守ってくれる存在、そして世界で最も愛する男性−シンジを失うことの恐怖が渦巻いている。


「...お願い..もう..やめて....シンジを..アタシから奪わないで..お願いよぉ..レイぃ..」


アスカが涙声でレイに訴えた。
レイとて、これ以上アスカを追い詰める気はない、そんなことをしてもシンジは喜ばないし、それこそ自分を許してくれないだろう。
彼女の瞳から怒りが消え、別の感情が取って代わる。


「..アスカ..碇くんはあなたを裏切るようなことはしないわ...絶対に。 だから、あなたもそんなことを考えないで..碇くんを信じて..それが私からのお願い」

「..レイ..」


アスカは涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げると、レイを見つめた。
先程までとは違い、神々しいまでに慈愛に満ちたその笑顔。
彼女はレイが本当に自分とシンジの幸せを望んでいることを知った。


「..うん..ありがとう...ごめんね、レイ」


ぎこちなくアスカは笑い返す。


「さぁ、顔を洗いましょ? お兄ちゃんが見たら幻滅するわよ? その顔」


くすくすと笑いはじめたレイの言葉に、アスカは素直に従い洗面所に向かう。
そんな彼女の心を試すかの様に、シンジはその日帰宅しなかった。















翌朝。
身仕度を整えたシンジが葛城家へと入ってくる。
そしてアスカの部屋の前に立つと、大きく深呼吸をして心を落ち着けた。


《怒ってるだろうな...でも..言わなくちゃ。
 そのために今まで黙ってたんだから。》


意を決すると、アスカの部屋のふすまを叩く。


「..起きてる? アスカ? 僕だよ」


どたばたと部屋の中で何かが暴れる音がする。
彼の顔にわずかながら恐怖の色が浮かぶ。


《やっぱり怒ってる...しょうがない。》


数発は殴られることを覚悟し、ふすまへと手を伸ばす。
その時、機先を制する様に勢いよくふすまが開いた。
そこに立っていたのはうつむき、小刻みに震えているアスカ。


「アスカ?」

「..シンジだ...」


予想とは裏腹な彼女の心細げな声。
心ならずも彼女に飲ませた孤独という名の毒薬。
幼い頃から捨てられることには人一倍の恐れを抱く彼女にとってはもっとも残酷な毒。
彼は彼女を抱きしめようと、そっと手を伸ばす。


シンジだぁ...わぁぁぁぁぁ...」


彼が抱きしめる前に、彼女の方から抱きついた、そして大声をあげて泣き出す。
感情のままに、赴くままに。


「...うっく....ひっく..ばかぁ..どこ行ってたのよぉ..」

「ごめん..でも、すぐにわかるよ。 とりあえず顔を洗って朝食にしよう?」


彼の声の響きに嘘はない。
優しく語りかける彼の言葉に、アスカは心が落ち着きはじめるのを感じた。















「さぁ、出かけるから着替えてきて。 動きやすい服装がいいかな?」


二人だけの朝食を終え、シンジがアスカに言った言葉。


「え?」


彼女は思いがけない彼の言葉に耳を疑ってしまう。


「だから、出かけるんだよ? 二人きりでね」

「ほんと? ほんとに二人で出かけるの?」

「もちろんだよ」


微笑むシンジに、アスカは輝く様な笑顔を返した。


「うんっ! 気合いいれておめかししなくちゃねっ!」


アスカはどたどたと自分の部屋に入って行った。
シンジもアスカの涙で濡れたTシャツを着替えに自分の部屋へと戻って行く。

30分後、二人はマンションの前に立っていた。
アスカは感嘆した様にシンジを見つめ、シンジは照れ臭そうに準備をしている。


「はい、アスカ」

「アタシの? シンジ?」

「そうだよ」


タンクバッグを固定し終えたシンジがアスカにヘルメットを渡す。
彼女はとまどいながらもそれを受け取った。


「んっ」


シンジがヘルメットを被り、アスカもそれにならう。


「さぁ、乗って」


先にバイクにまたがったシンジが、グローブを着けながら言う。
跳ね上げられたシールドからその優しい目が見えている。


「うん..」


シンジがこんなデートに誘ってくれるとは思いもよらなかった。
フルフェイスのヘルメットに遮られ良くわからないが、彼女の頬は仄かに朱に染まり、どこか照れ臭そう。


「ま、いいか。 3週間分甘えさせてもらうわよ? シンジっ!」


ヘルメットの中でつぶやいたアスカは、さっとシンジの後ろに座る。
そして、シンジの身体に腕をまわすとぎゅっと抱きしめた。


「あ、そうそう、説明し忘れてた」

「え? なに?」


振り返ったシンジの言葉がよく聞こえなかったらしく、アスカはシールドを跳ね上げて聞き返す。


「うん、ヘルメットの左にあるスイッチに触れてみて」


シンジの言葉に、アスカが左の方を指でなぞってみると、なるほど感圧センサーらしきものがある。
微かに力を込めてみる。


『どう? 聞こえる?』


クッション内に仕込まれたスピーカーから彼の声が聞こえてきた。


「あ、よく聞こえるわ」

『そう、さすがリツコさんだね。 注文通りだ、こっちもよく聞こえるよ』


リツコ特製のインカムを内蔵したヘルメット。
これの作成を頼むのに、シンジはいくつかの猫グッズをリツコのもとに持参した。
二人がシールドを下げると、右下にそれぞれの通信相手である”SHINJI”と”ASUKA”の文字が浮き上がって見える。


『さぁ、行くよ。 しっかり掴まっててね』


言葉の代わりに、彼女は腕に力を込めることで答えた。


《誰が捕まえて離すもんか、バカシンジ》


アスカを振り落とさない様に、シンジは静かにバイクを発進させる。
二人が角を曲がって見えなくなるまで、レイはベランダから見送っていた。















第3新東京市街を抜け、二人を乗せたバイクは元箱根から大観山、十国峠へと走って行く。
最初はバイクの挙動に戸惑っていたアスカも、シンジと動きを合わせれば良いことに気づき、連続するコーナーを駆け抜けて行くたびに彼との一体感を感じていた。


《でも..妙ねぇ? シンジが免許取ってたのは知ってるけど、なんでこんなに上手いわけ?》


シンジは16才になるとほぼ同時に免許を取った。
それは緊急用にという名目でネルフで取得したのだが、アスカは今さらそんなこともないだろうと考え、自分は取らなかった。
そして、シンジがバイクに乗っている所など見たことがない。
その疑問を、休憩している時に聞いてみた。


「ねぇ? なんでこんなに運転上手なのよ?」

「ん? 練習したからに決まってるでしょ?」


当たり前と言えば当たり前な返事。
彼女は毒気を抜かれた。


「そういうことを言ってんじゃなくて、その練習はどこでしたのよっ !」

「ネルフに決まってるじゃない」


ひょうひょうと彼は答えた。
その態度にアスカは誰がシンジにライディングテクニックを教えたかを悟った。


「加持さんね?」

「あ、やっぱりわかった? そう、週末ごとにテストコースで加持さんに教わったんだ。 そりゃあ厳しかったんだから」


にこにこと笑いながらの返事に、彼女は苦笑した。


「だったらなんで早く言ってくんなかったのよ? あんたが浮気してんじゃないかって、こっちは気が気じゃなかったんだからね!」

「ごめん、そのことは謝るよ。 でもね、あんな限界域まで攻め込む様なライディング、アスカに言ったら絶対心配すると思ったから..」

ばか

「はいはい、どうせ僕はバカシンジです」

《そんなバカに惚れるアタシは底なしのバカかもね。》


言葉とは裏腹に微笑んでいるアスカを、シンジは不思議そうに見つめた。















「さぁ、着いたよ」


バイクを停め、スタンドを蹴り出しながらシンジがそう言う。
アスカは彼の言葉に従い、バイクから降りた。


「ぷはっ」


ヘルメットを脱ぐと、彼女は安堵感から大きく息を吐く。
隣を見ると、シンジもヘルメットを脱ぎ、シートの上に置いていた、アスカもそれに習う。
仲良くシートに鎮座する、かつて使っていたプラグスーツと同じ配色の二つのヘルメット。


《まるでアタシたちそのまんまね。》


二人が立っているのは、かつては高い岬だった場所。
セカンドインパクト後の海面上昇により、その高さは低くなったとはいえ、今だ岬であることに変わりはない。
シンジはタンクバッグから、小さいサブバッグを取り出すと、アスカの手を取ってその突端へと歩いて行く。


「うっわぁー!」


眼下に広がる海。
そのブルーと空のブルー、そしてアクセントとして加えられている白い雲と波。
誰にも作り出せない、自然のみが作り出すその絶妙な取り合わせ。
潮風にその長く美しい髪をなびかせながら、彼女が驚きの声を上げる。


「ねぇ? アスカ」

「なぁに? シンジ」


彼女は甘えた様子でシンジを見上げる。


「この岬の名前知ってる?」

「あんたバカぁ!? アタシがそんなこと知ってるわけないでしょ!」


甘えモードから一転、あんたバカが出た。
だけど、このころころ変わる感情が彼女の持ち味。


「ここね、恋人岬って言うんだ」

「え?」


海を見ながら、ぽそっとつぶやく様な彼の言葉にアスカは何かを感じた。


「恋人...岬?」

「うん、それでね...」


彼は照れ臭そうに言葉を続ける。


「..今はないけど、以前は鐘があって、その鐘を3回鳴らすと永遠の愛が叶うって言われててさ..」

「...シンジ..」


そして彼はサブバッグの中から何かを取り出した。


「だから、ここで鳴らそうと思って」


彼の手の中で、澄んだ音を立てているのは、小さなガラス製のベル。
その音色と、彼の言葉を聞いたアスカの瞳にみるみる涙が溜まっていく。


「泣かないでよ」

「うれし涙なんだからいいじゃない..すぐ止まるわよ」


彼女が泣きやむのをシンジは待った。
そして言葉を続ける。


「一度目は自分の心を清めるため、二度目は相手の心を呼ぶため、そして三度目に愛しい人の名前を叫びながら鳴らすんだ」

「ふぅん」

「じゃ、いいかな?」

「いいわよ」


二人は見つめあうと、ベルの取っ手をそれぞれつまんだ。
目で合図したあと、チリーンと澄んだ音が響く。
続いてもう一度。
最後のベルを鳴らす前、二人は大きく息を吸い込む。
そして。


「アスカぁ!」「シンジぃ!」


小さなベルの音をかき消す様に響き渡る二人の声。
そして二人は見つめあい、長い口づけを交わした。


「ねぇ? アタシも免許取るわ」


キスの余韻をまだ引きながら、上気した顔で彼女が言う。


「あ、そうだね。 そしたらいっしょにツーリングも行けるし」

「ばぁか、免許は取ってもバイクは買わないわよっ!」

「え? なんでさ?」


意表を突いた彼女の言葉に、シンジはきょとんとしたまま聞き返す。
そんな彼にアスカはくすっと笑うと返事を返した。


「だって、別のバイクに乗ったら、あんたに抱きつけないじゃない!」


彼女の正直な気持ち。
言った直後にみるみる赤くなっていく。


「アスカ、目をつぶってくれる?」

「なんでよ?」


シンジの言葉に、アスカは照れ臭いのか、ジト目で見ながら返事をする。


「いいから」

「しょうがないわねぇ、はい」


彼女はいかにもしょうがないといったふうに目を閉じる。
その髪にシンジの指が触れた、まとめる様に髪を梳いていく。


《ふぅん...シンジにこうやって髪をいじられるのも悪いもんじゃないわね。》


「さぁ、目を開けていいよ」

「なによ? 一体?」

「自分で見てごらん?」


彼の言葉に、アスカはポーチから手鏡を出すと、覗き込んだ。


「..これ!?」

「どう? 気に入ってくれたかな? 大したもんじゃないけどさ、アスカはやっぱりこの方が似合うと思うから」

「あんたにしては上出来ね」


上目づかいに言うアスカの髪には、どこかコミュニケーションヘッドセットにも似た髪留めがあった。
リツコに指導してもらいながら、彼が自分自身で作ったものだ。
そしてシンジはアスカの耳元に口を寄せそっとささやく。


「............ね?」


何を言われたのか、彼女の目が一瞬見開かれ、次の瞬間には目尻が下がった。
そして頬を染めたまま、その顔がふにゃっとばかりにだらしなくゆるむ。


「うんっ!」


そう言って、アスカはシンジの胸の中に飛び込んだ。
やがて、彼女の肩が小刻みに震えだす。


「アスカ、泣いてるの?」


という、シンジの言葉にアスカはぷるぷると首を振り、上半身を反らして顔を上げるとシンジに向かって笑いかける。
まるで世界中の幸せは全てもらったと言わんばかりのその笑顔。
そして彼以外には絶対聞かせない声を出す。


「ねぇ? シンジっ」

「ん?」

「だぁいすきっ












「ちょっと、押さないでよ!」

「そうは言うがなぁ...」

「ミサト、こんなことにMAGIと偵察衛星使わないでくれない?」

「うっさいわねぇ、そんなことより音声はどうにかならないの?」

「残念ながら、第3新東京市内ならともかく、あそこじゃ無理ね。(ほんとはヘルメットの回線使えば可能だけど..)」

「ちっ、それよっか、なんでシンちゃんがあそこのこと知ってんの?」

「あぁ、オレが教えた」

『...加持くん、これからも頼むぞ』

「今の、司令...?」

「みたいだな、なんだかんだ言って親馬鹿ってことだ」

「そうね」

『二人とも、ボーナス査定を下げられたいかね?(ニヤリ)』

「「めめめめめめっそうもございません〜!!」」


後悔という名の後書き、もしくは後あがき。(爆)

もっと早く公開する予定だったんですけど、思いっきり遅れてしまいました。
う〜ん...思ったより長くなってしまいましたねぇ。(^^;
当初の予定では20KBぐらいかなと思ってたんですが、気づいてみたらこのシリーズ中最長。(爆)
タイミング的にアスカ様の誕生日記念ということにしておきましょうか、シンちゃんからプレゼントをもらってることですし。(をい

セカンドインパクトによって恋人岬がどうなったのかは判らないので、とりあえず適当に考えてます。(爆)
おまけに最後に行ったのが相当前だから、どんな風景だったか忘れてしまいました。(^^ゞ
と言うわけで、その辺の描写はフィクションです。(笑)

あと、<font face="">が有効でないブラウザかsymbolがインストールされてない場合は、最後のハートマークが見えないかもしれませんね。(^^;

ネタがそろそろなくなってきてます。(^^;
もし、ご提案やエピソードのリクエスト等があれば教えて下さい。m(__)m
でわでわ。



〜 サブタイトルはCharaの同名の曲 ”どこに行ったんだろう? あのバカは”より 〜

1998.12.03 おかやん






まんた☆彡からの一言

おかやんさん、ボリュームの有る投稿ありがとうございました。


ケンスケの相手役ってどうしてもマユミちゃんなんですね。
まさに余り物カップル!
それにしも「ケンちゃん」って……志村ケンみたいっすね(ぉ


バイクで出かけるシンジ達を見送る綾波がちょっと可愛そうですね。
でもらぶらぶアスカさまっ!ではLRSは認めません(笑)



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