もう第何回だか忘れてしまうほど繰り返した定期シンクロテスト。
その帰りの電車の中…。
アタシは少しムカついている。

理由?

そんなの決ってるじゃない。
ファーストのヤツ、いつもはさっさと先に帰っちゃうくせに、
今日は何故だかアタシ達と同じ電車、同じ車両、しかもシンジの隣にちょこんと座っている。
しかも殆ど密着しているといってもいいほどに…。

『ムカツク!』

これ以外の言葉が現在の心理状態に合う言葉があるだろうか。

アタシもシンジの隣に座ればいいって?

当然アタシもシンジの隣に陣取ってるわよ。
けど、若干距離を取っている。
これはどうしても素直になれないアタシとシンジの心の距離……。

まっ、そんな事はどうでもいいわ。
とにかくアタシはムカついているのよ。



「寄り添い」



ムッ!

ファーストのヤツ、狸寝入りなんかして、アタシのシンジに寄りかかって。
それにシンジもシンジよ。
顔を真っ赤にして俯いちゃって、チラチラ、ファーストの顔を覗ってる。
そんな貧乳が肘に当ったからって、緊張してんじゃないわよ。
みっともない。

ファースト如きの色仕掛け、どうってことないでしょ。
こうなったら帰ったらすぐに特訓よ。
いいわねシンジ。

どんな特訓をしようかしら?

とりあえず、第1段階からヘビーな特訓じゃシンジも持たないでしょうから、とっても軽い特訓が良いわね。
まずはシンジによりそって、純愛モノのドラマを鑑賞するってとこかしらね。



〜妄想中

「シンジ、特訓よ。」
「え?なんの特訓だよ。」

当然、シンジは聞き返してくる。
だけど、アタシはそんなのお見通し。

「なにって、判らないの?」
「急に特訓だなんて、言われても判るわけないじゃないか。」
「特訓って言ったら、“シンジがファーストの色仕掛けに負けないように特訓する”の略に決ってんじゃない。」
「え〜、なんだよそれ?」

呆れ顔のシンジ。
全く、呆れてるのはこっちの方よ。
ファースト程度の色仕掛けでガチガチに緊張しちゃってさっ。

「折角、この天才美少女のアスカ様が特訓してやろうってぇ〜のに断る気じゃないでしょうね?」

いつもの強気な調子でシンジに言い放つ。
そうするとシンジはこう言うのよね、きっと。

「わかったよ。特訓をしてもらうよ。」

ほらね。

「特訓っていったいどんな事するんだよ?」
「まず、第1ステップとして、アタシとテレビ鑑賞をするのよ。」
「え〜、そんな事で色仕掛けに強くなるの?」

胡散臭げにアタシをみるシンジ。
でもアタシは自信満々にこう言い放つ。

「あったりまえでしょう。このアタシの計画に間違えないわよ。」

そう、アタシの立案した、シンジとラブラブ計画に間違いがあるはずがない。
ん?シンジのヤツ、なにか急に納得した顔になったわね。

「わかった。エッチなビデオでも観っ…」

バキッ!

アタシは無言の一撃をシンジの顔面にヒットさせる。

「アンタバカァ!
 なんで天才美少女のこのアタシが、エッチビデオなんて見なくちゃいけないのよ。」
「だって、ただテレビを観たって、色仕掛けには強くならないじゃないか。」
「じゃあなに、エッチビデオを観れば色仕掛けに強くなるって言うの?アンタは。」
「そう言う訳じゃないけど…。」

フッ、バカシンジごとき、所詮このアタシの敵じゃないわ。
って、そんな事で満足してる場合じゃないわ。
アタシにはテレビを観ながらシンジといちゃつくという、究極の目標があるのよ!!!


ロマンチックなテレビドラマに触発されて、互いの距離が徐々に縮まってゆき…。


そっと触れ合う、指と指…。


そして、見詰め合うシンジとアタシ…。



そして…、そして…、アタシ達の唇は……。





「………、アスカ、アスカ、アスカ。」

もう誰よ!
アタシの幸せを邪魔するの!

妄想終了〜


「なによ!」

と、呼ばれた方に向かって怒鳴りつける。

「ご、ごめん。」

なんて事は無い。
アタシを呼ぶ声はシンジだった。

「なんか用?」

ぶっきら棒に訪ねる。

「寝てるところを起こしちゃってごめん。」

そっか、アタシ、特訓のプランを考えながら寝ちゃったんだ。
それにしても、なんですぐにあやまんのよ。
と、心の中で思いつつ。

「それはもう良いわよ。で、なに?」
「あのさ、なんだか今日は凄く疲れてるみたいだね。さっきから舟漕いでたよ。
 良かったら僕の肩貸すから、枕のかわりにでもしてよ。」

「えっ?」

一瞬、シンジが何を言っているのか判らなかった。
判ったのは、シンジの頬が心持ち紅かった事。

でも、次の瞬間にはアタシの頭はシンジの肩おさまっていた。

そして、アタシは、深い、深い眠りに落ちていった。



あとがき

こんなもんでいかがでしょうか?
この作品はかなり前から完成していましたが、
なかなか発表するに至らなかった可哀想な作品なんです。
いつもと同じように短めですが楽しんでいただけたでしょうか?

でわでわ。



ここから戻れるわよ